現職自衛官、元自にどうして自衛官になりたいと思ったのかを取材しました。
興味あるけど志望動機に悩む方、自分の人生どう生きようと考えてる方向け
任期満了金を求めて入隊したケース
K士長に話を伺うと一番はお金の為に入隊したとのこと。
高校3年の時に学校からは大学進学を進められた。
しかし家計が厳しく、父親から申し訳ないが学費は出せてもそれ以上は無理だと言われ、奨学金を借りる事も考えた。
奨学金とはいえ借金に変わりはなく、マイナスからのスタートになるよりは自衛官になって貯金して大学に行こうと決意。
このまま3曹昇任を目指してみる気は?と尋ねると、やりたいことがあるので任期満了で辞めますときっぱり。
面接のときも素直に進学金を貯めたいからと伝えると、面接官からそういう人結構いるよ!自衛隊は任期満了で辞める時にTOEICや簿記等の取得講座も受けられるから自分のために入隊するのは良い事だ、と褒められたらしい。
K士長自身は進学校で部活もしておらず最初はかなり苦労したが、周りに助けられてなんとかやっていますと伝えてくれた。
防大は考えなかったの?と聞くと
「あーそっち行くと辞めるのも一苦労かなあって思ったのと、本気で幹部自衛官になって日本を守りたいって考えてる人に失礼かなって」
あと自分が学びたいカリキュラムがなかったのもあったとか。
じゃあ今はとにかく貯金一直線?と聞くと
「定積でストレスにならない程度に(笑)週末は同期とよく飲みにも行ってますよ」
高校時代の友達に自衛官になったって伝えた?
「ええええー--!絶対嘘だあ。イメージ合わないし、無理っしょと頭から否定されました(笑)」
確かに見た目はひょろっとしてるし、あまり自衛官ぽくは見えない。
「よく言われます(笑)腕立てもかなり回数こなせるようになったんだけど、全然逞しく見えないんです」
外見の変化に乏しいのが悩みの種らしい。ただ目力があるのと背筋が通った姿勢は自衛官のそれに見える。
「ぶっちゃけ自衛隊に入って良かったと思う?」
「うーん即答は難しいけど、良い経験だとは思います。元はコミュ障だったんですけど、なんか揉まれてるうちに喋れるようにもなったし」
「あーあるある。いじってくる人多いもんね」
「僕の場合は周りに恵まれたのもあって陰湿ないじりじゃなくて、何かと気にかけてくれた感じです。おかげで話すのも苦手ではなくなりました」
「そっか。最後に入隊を迷ってる人に何かメッセージがあればお願いします。」
「迷ってるくらいなら飛び込んでみた方が良いと思います。時間勿体ないし、割と何とかなるもんです」
K士長は来年2任期満了を迎える。
このまま3曹になって公務員として安定した人生というのも考えたが、必要なお金を稼いだら次の行動に移りたいと語ってくれた。
今の時代に適した生き方だなと感じた。
3曹になってから自衛隊にいる意味を見つけたケース
Y3曹は高校時代に陸上で記録を残し実業団からスカウトされた。
親の意見は女の子ということもあって実業団。本人は自衛隊に興味があって二択に悩んだとか。
そんなY3曹(フェイク入ってます)に聞いてみた。
「どうして自衛隊を選んだの?」
「戦争のない時代で人の為に一番役に立てると思ったのが災害派遣でした。特に日本は災害がとても多い国なので自衛隊が身近に感じたというのもあったと思います」
淡々と、模範解答のような答えを出してくれた。でも何となく引っかかった。
「Y3曹の名前を検索すると記録が何個も出てくるんだけど、実業団はどうして蹴ったの?」
「アスリートとして1秒を縮めるために努力するのも好きでした。でもずっと続けるのは無理だなって思って。あとスカウトしてくれたのは地元の企業だったので地元から離れたいって気持ちもありました(笑)」
「どちらかというと親への反発心もあった?」
「えーっと少しはあるかもしれません。。。あまり人の心覗かないでください(笑)」
「ごめんごめん(笑)なんとなくそう感じただけだよ。じゃあ仕切り直しでどうして3曹になりたいって思ったの?」
少しだけ考えたあとY3曹は思いを語ってくれた。
「正直何も考えてなくて、試験受けたら受かったからだったんですが、最近少し理由付けが出来てきたような気がします」
「そりゃ男子顔負けの体力と行動力あれば試験は楽勝だよね。それでそれで?」
「茶化さないでください(笑)3曹昇任後に朝霞にある女性自衛官教育隊に班長役で出向したんです」
「臨時勤務?」
臨時勤務は部隊の所属を変えずに一時的にヘルプ要員として勤務すること。
特に業務隊や教育隊に数か月の単位で呼ばれることが多い。
「はい。そこで新隊員の班長兼助教として勤務させていただきました」
「なるほど。そこで何か心に来るものがあったんだ」
「はい!災害派遣以上の体験をさせてもらったと思ってます」
ナビクマがそう聞くとY3曹は今日一番の笑顔で答えてくれた。
Y3曹は成績優秀体力検定満点のスーパーウーマン。
新隊員教育隊の時もグイグイ周りを引っ張っていく役割で毎日楽しく過ごしていたらしい。
でも3曹になって助教の立場で教育隊に入ると、難しい現実が待っていた。
腕立て伏せ0回の候補生は沢山いる。
課業外も付き合って何度も練習するけど中々出来ない。
そんな子がいっぱいいる中で、Y3曹の受け持った班員にいつも俯いていた子がいた。
公務員だから安定してるからと親の勧めで自衛隊に入って、訓練についていけず慣れない団体生活で体調を崩し、課業開始のラッパが鳴ってもトイレに引きこもって出てこない。
親に何度ももう無理だから辞めたいと泣きながら電話しても「ここで辞めたら次どうするんだ」と説教され話を聞いてもらえない。
同期も励ましてくれたけど、自分がここに居るだけで皆に迷惑がかかってしまうと悩み、自傷行為に及んでしまった。
Y3曹はすぐにその子の変化に気付くと上司に報告し、ご両親を駐屯地に呼んで上司と一緒に状況を説明。
その子は依願退職する事になった。
辞める日に駐屯地正門まで見送った際、ご両親に「あなたが居てくれて本当に助かりました。もう少しで取り返しのつかない事になるところだった。あちがとうございました。」と感謝されたとのこと。
「その経験をしてからは無理に押し付けるのではなく、相手が本当にやりたいと思ったことを応援しようという気持ちになりました。あと部隊相談員(隊員の悩みを聞く人。集合訓練でMOSを付与される)になりたいって思って、行動しています」
「凄い経験をしてきたんだね。部隊相談員かあ。まさに適材適所だと思う」
「ありがとうございます。今まで運動専門だったので心理学やメンタルの本読むの慣れなくて大変です(笑)」
「じゃあ最後に入隊を迷ってる方に何かメッセージをお願いします」
「私のように後から入って良かったと思う事もあると思うので、迷ってるならチャレンジしてください!あとホントにヤバいと思ったらSOSを出せば助けてくれます。躊躇わないで助けを呼んでくださいね」
最初は親への反発と地元から離れたいという考えから入隊。
その後やりたい事を見つけたY3曹。
自衛隊に入る事で環境が大きく変わるのと同時に、自分の行動力も変わる。
迷ってる方は是非チャレンジ!
今回取材に応じてくれたK士長とY3曹に感謝致します。