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職種紹介は陸自ナビクマの勤務経験に基づき、これから自衛官を目指す人に向けて書いています。
少々偏見も混ざっていますがご了承ください。
※2022年2月元衛生職種の方より情報提供をいただきましたので追記しています
衛生科の役割
参考
隊員の治療
健康管理
防疫
患者搬送
救護要員
自衛隊病院
【出典】陸上自衛隊
衛生科隊員は負傷(疾病)した隊員に対する応急処置等の治療行為を行います。
医療行為は医師資格等の国家資格を保有している隊員のみですが、資格を保有していない隊員は法の範囲内において応急処置を実施します。
自衛隊に入る前に何らかの医療資格を持っていた場合、自衛官候補生で入隊しても飛び級するというシステムがあります。
医師資格を持っていれば2等陸士から3等陸尉へ一気に昇任し、職種は衛生科で固定、更にすぐ研修医として勤務することに。
薬剤師や歯科医師でも同様です。看護師の場合は技術陸曹として2曹に昇任します。
※2022 2月追記
現在は看護師、救命士、検査技師の資格を持って入隊してもMOS(部内資格)が付与されず、看護官等になれないとの事です。
訂正いたします。
【出典】陸上自衛隊
自衛官は年1回定期的に健康診断を受けます。
年齢に応じてがん検診等も受けることができます。
また部内の教育機関に入校する際にも、入校にあたって心身に異常がないか確認します。
その際は自衛隊病院や駐屯地医務室で受けることになります。管轄は勿論衛生科です。
その他、喫煙者用の禁煙プログラム、肥満隊員用のプログラム等もあり利用されている方がいらっしゃいます。
防疫は感染症や伝染病の予防等を行います。
こちらも衛生科が担任し、必要に応じて他部隊が作業員として割り振られます。
具体的には鳥インフルエンザ、コロナウイルス等です。
駐屯地で感染症が発生した場合、状況に応じて衛生科を中心とした防疫部隊が開設され駐屯地の防疫を担当します。
写真のようにタイベックスという防護服を着て除染にあたるのですが、とても暑く重労働です。
衛生科部隊には救急車両が配備されています。通常の白と赤の救急車もあります。
隊員のケガ等で病院への搬送が必要な際に使われる他、訓練において事故が発生した際すぐに搬送できるように常にスタンバイしています。
また災害派遣や共同訓練等にも使用されています。
救命士の資格を取ることで職域の幅も広がります。
陸上自衛隊の訓練では基本基礎や体力練成訓練等を除いた全ての訓練に衛生科部隊の隊員が随行し、傷病者が発生した際に手当を行います。
中隊、連隊、師団、共同訓練等、訓練の規模により随行隊員が決まります。
大きな訓練であれば医官が、小さな訓練であれば医療資格なしの衛生科隊員が随行します。
自衛隊には全国に自衛隊病院があります。
隊員は無料で受診が可能で隊員の家族や一般の方も利用すること出来ます。
衛生科隊員は保有資格に応じ自衛隊病院の勤務も多くあります。
衛生科の良い所
参考
配属先がとても多い
女性自衛官が多い
PKO、国際緊急援助隊に参加しやすい
人から感謝される
医療系資格が取得可能
自衛隊病院、方面衛生隊、後方支援連隊以外にも多数の部隊に衛生小隊があり、衛生科隊員が所属しています。
〇〇普通科連隊本部管理中隊衛生小隊等です。
異動先には困らないメリットがあります。
また女性自衛官も多く配属されています。
医療を扱うことからPKOや国際緊急援助隊には必ず衛生科隊員が参加します。
PKOに優先して派遣されやすいため、海外で勤務してみたい隊員にも人気です。
海外の風土、文化に触れると共に、多額の手当が付きます南スーダンの場合日額16,000円。
加えて国連から手当が支給され、更に派遣期間に応じて国連休暇も付与されます。
近隣の国に公費で観光出来るという至れり尽くせりの状態。
更に食事、住居、医療費もタダで、おやつも支給されます。
半年で約300万プラス給与と賞与です。
勿論国外の駐屯地ということもあってストレスのはけ口が少ないため、人間関係には特に気を遣うというデメリットもあります。
次年度の税金が上がりますが、それらを差し引いても大きなメリットと言えます。
取得可能な医療系資格
准看護師
救命士
放射線技師
臨床検査技師
薬剤師
歯科医師
防衛医科大学
自衛官候補生及び一般陸曹候補生から入隊したケースでは准看護師、救命士、放射線技師、臨床検査技師の資格を取得する事が可能です。
部内選抜試験に合格し、陸曹候補生課程、准看護師課程等の課程を修了すると資格が付与されます。
准看護師、救命士、放射線技師、臨床検査技師は技術曹となり、専門職として勤務します。
救命士は准看護師課程の成績優秀者から選抜され、救命士の課程へ入校する事が出来ます。
上記は衛生科以外の職種でも応募する事は可能です。
他職種の場合は課程を修了し、MOS(部内特技)が付与されると衛生科職種へ職種変換となります。
同時に課程修了と共に部隊異動となります。
細部は配属部隊の人事陸曹に確認して下さい。
※注意点として、現行の制度では各種課程選抜試験前に既に資格を保有している場合は入校する事が出来ません。
MOS(部内特技)も付与されないため、医療行為を行えない資格保有者となります。
薬剤師、歯科医師は幹部課程で入校し取得する事となります。
医師、看護師は防衛医科大学に入学し、それぞれ学ぶ事になります。
細部は防衛医科大学のHPを参照願います。
衛生科のデメリット
参考
准看→正看への道はない
人気があり枠が少ないので通らないことも
支援が多い
准看から正看になるルートは現時点でありません。
正看になりたいのであれば、防衛医科大に看護師課程で入学する必要があります。
衛生科は全職種の4%程度であり、なおかつ准看護師として他職種から毎年一定数が入るのに加え、防衛医科大の卒業生も衛生科として配属されます。
現時点では4月以外の季節隊員では枠がなく希望しても通らないことがあります。
一定の規模の訓練には必ず衛生科隊員が同行するため、支援業務が多々あります。
演習場、射場の使用調整で土日の訓練も多いため、代休がたまりやすい環境です。
※追記 現制度上の問題点
陸自において出来ないこと
外で取得した資格が一部使えない
キャリアアップの制限
資格を活かせず退官された方も
上記医療系資格の取得でも書いていますが、自衛隊入隊前に外部で資格を取得した場合、一部の資格はMOS(部内特技)として扱われず医療行為を行えないという問題点があります。
入隊前に准看護師、看護師、検査技師、救命士を保有→各種課程に入校出来ないため、自衛隊内で必要とされるMOS(部内特技)が取得不可
医療行為を行うには自分が持っていない資格の課程に入校し、資格及びMOSを取得する必要が生じます。
自分の強みを活かせない制度上の問題のため、陸自でも既資格保有者に対しMOSを付与することを検討しているといった情報もありますが、現状ではまだ確定していないとの事です。
自衛官になる前に看護師の資格を保有していたAさん
Aさんは入隊前に看護師の資格を保有していました。
国防への貢献と自分の能力を活かしたい思いから自衛隊に入隊され、看護官へとキャリアアップを目指します。
しかし現状では看護師の資格を持っていても、自衛隊内部で医療行為を行う際に必要とされるMOSが付与されないため、ご自身の能力を発揮することが出来ず、退官の道を選ばれました。
速やかに制度を改善する必要性があると思います。
まとめ
衛生科隊員は防衛医科大卒業生、一般の医療資格保持者、それ以外に分かれる
衛生科は配属先がとても多い
入隊前に資格を取得した場合の制度上の問題点